「日本では、土葬は法律で禁止されている」
多くの方がそう思っているのではないでしょうか?
海外の映画やドラマでは当たり前のように土葬のシーンが出てきますが、現代の日本では、ご遺体を火葬するのが当たり前になっていますよね。
しかし、実は「日本では土葬は法律で禁止されている」というのは、正確ではありません。
では、なぜ私たちは「土葬は禁止」というイメージを持っているのでしょうか。
そして、なぜ日本の火葬率は99.9%以上という、世界でも類を見ないほどの高さなのでしょうか。
この記事では、そんな「日本の土葬」にまつわる疑問について、
- 法律上の本当のルール
- 日本が「火葬大国」になった歴史的・文化的な背景
- イスラム教など、土葬を必要とする宗教への対応
- 現在、日本で土葬が可能なのか
といった点から調査してみました。
疑問に思っている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
結論:日本の法律で、土葬は「禁止されていない」が正解 📜
まず最初に、今回の調査の結果、2025年現在の日本の法律において、土葬そのものを全国一律で禁止する法律は存在しませんでした。
根拠となる法律「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」
日本の埋葬ルールを定めているのは、「墓地、埋葬等に関する法律(通称:墓埋法)」です。
この法律の条文を見てみましょう。
第四条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。 第五条 埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。)の許可を受けなければならない。
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(引用:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei15/)
ここには「土葬をしてはならない」とは書かれておらず、「埋葬(土葬)や埋蔵(納骨)は、決められた墓地で行いなさい」「火葬や埋葬には、役所の許可が必要です」と定められているだけです。
つまり法律レベルでは、土葬も火葬もルールを守れば認められている、ということになるんですね…!知らなかった…!
自治体の条例という「壁」
では、なぜ「禁止」というイメージが広まったのでしょうか。
その大きな理由が、各自治体が定める「条例」の存在でした。
法律では禁止されていなくても、多くの自治体、特に都市部では、公衆衛生上の理由や土地の確保の難しさから、条例によって土葬を禁止したり、事実上不可能な厳しい規制を設けたりしていました。
例えば、東京都の23区では、条例によって土葬が全面的に禁止されています。
このように、多くの人が住む地域で土葬ができないため、「日本では土葬は禁止」という認識が広まっていったことが推察されます。
なぜ火葬が99.9%に?日本が「火葬大国」になった3つの理由
法律で禁止されていないにもかかわらず、なぜ日本は世界一の「火葬大国」になったのでしょうか。
その背景には、衛生、土地、そして文化という3つの大きな理由が絡み合っています。
理由1:衛生面への配慮と伝染病の防止 🩺
これが最も大きな理由だと思われます。
明治時代、コレラなどの恐ろしい伝染病が流行し、多くの人々が亡くなりました。
当時はご遺体から感染が広がることを防ぐため、政府は公衆衛生の観点から火葬を強く推奨しました。
「伝染病予防法」が制定され、特定の病気で亡くなった方は火葬が義務付けられた歴史もあります。
このような流れの中で、「火葬=衛生的で安全」というイメージが国民に広く浸透していきました。
理由2:深刻な土地不足 ⛰️
日本は国土の約7割が山地であり、人々が暮らせる平野部は限られています。
人口が密集する都市部では、新しい墓地を作るための広大な土地を確保することは、ほぼ不可能です。
一体のご遺体を埋葬するには、ある程度の広さの土地が必要ですが、火葬してご遺骨にすれば、非常にコンパクトなスペースで済みます。
この国土の狭さと人口密度の高さが、火葬を選択せざるを得ない大きな物理的要因となったようです。
理由3:仏教の普及と火葬文化 🙏
火葬は、仏教の発祥の地であるインドから伝わった文化です。
お釈迦様が火葬されたことから、仏教では火葬が一般的な弔いの方法とされてきました。
日本では、古来は土葬が主流でしたが、仏教の普及と共に、皇族や貴族階級から火葬が広まっていきました。
江戸時代には庶民の間でも火葬が行われるようになり、明治政府の衛生政策と相まって、火葬が日本の弔いの文化として完全に定着していったことがわかります。
土葬を望む人々はどうしている?宗教と現代の墓地問題
火葬が当たり前になった現代の日本でも、宗教的な理由から土葬を強く望む人々がいます。
近年よくニュースなどでも取り上げられることの多いトピックですが、どのような状況に置かれているのかを調査してみました。
イスラム教(ムスリム)の墓地問題 🕌
イスラム教では、教義によって火葬が禁じられており、ご遺体をそのまま土に還す「土葬」が義務付けられています。
しかし、日本で暮らすイスラム教徒(ムスリム)の方々は、墓地不足に直面しています。
イスラム教の墓地問題
- 土葬が許可されている墓地が極端に少ない。
- 新しい土葬墓地を作ろうとしても、衛生面への懸念などから近隣住民の理解が得られにくい。
- ご遺体を海外の故郷に送還するには、莫大な費用がかかる。
これは、日本の国際化が進む中で、多様な文化や宗教とどう向き合っていくかという、社会全体の大きな課題となっています。
キリスト教の場合 ⛪
キリスト教も、伝統的には「復活の日」に備えてご遺体をそのまま埋葬する土葬が基本です。
しかし、日本のキリスト教徒の多くは、国内の土地事情や社会通念を受け入れ、火葬を行うことに比較的柔軟です。
火葬後、ご遺骨を教会のお墓や納骨堂に納めるのが一般的とされています。
土葬墓地は土地を広く使わなければいけない点や、水質汚染による風評被害、地価が下がることへの懸念から反対されるケースが多いことがわかりました。
【2025年最新】日本で土葬が可能な墓地・霊園は?
前述の通り、多くの自治体で土葬は制限されていますが、現在でも土葬が可能な墓地は少数ながら存在していました。
- 土葬が比較的認められやすい地域
土地に余裕のある地方や、歴史的に土葬の風習が残っている地域、また宗教的な背景を持つ特定の霊園などです。(例:山梨県、茨城県、北海道の一部など)
- 探す際の注意点
土葬を希望する場合は、まずお住まいの自治体の役所(環境衛生課など)に、土葬に関する条例の有無や、許可されている墓地があるかを確認する必要があります。その上で、個別の霊園や寺院に直接問い合わせることになります。ハードルは決して低くありませんが、可能性はゼロではありません。
土葬はご遺体が土に還るまで時間を要することから、埋葬する際は広い土地が必要なんですね。
まとめ:法律で禁止ではないが、現実的な選択肢として火葬が定着
今回は、「日本の土葬は禁止?」という疑問について、その真実と背景を掘り下げました。
- 法律レベルでは、土葬は禁止されていない。
- しかし、多くの自治体が条例で規制しており、事実上困難な地域が多い。
- 「衛生問題」「土地不足」「文化」の3つの理由から、火葬が99.9%以上を占めるようになった。
- 宗教的な理由で土葬を必要とする人々は、深刻な墓地不足という課題に直面している。
「土葬が禁止」というのは厳密には誤解ですが、そう思われるほど、火葬が日本の社会に深く根付いているのですね。
この記事が、日本の葬送文化への理解を深める一助となれば幸いです。